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「定期購読」のための雑誌

雑誌が休刊になる度、残念だ、という声を聞くけれど、実際その人がその雑誌を「定期購読」していたかというと、そうでもないことが多い。雑誌が休刊になる理由は、単に実売数が減ったから、だけではないのでけれど、買わないことには成り立たないので、残念も無念もないもんだ。

まあ、残念だというからには、一応その雑誌を買ったことぐらいはあるんだろうけれど、特集によって買ったり買わなかったりしているんでしょう。酷い時には、自分が書いたり関係したりしている記事が載っているから、というだけで嘆いているんだから、ただのナルシズムより身銭を切らない分、性質が悪い。

出版社にとって雑誌は、実売以外に広告で収入があるから、単価を安くして利益を上げることができる。書店にとっては、毎月毎週発売されるので、同じ種類の雑誌なら実績から安定した仕入れをすることができ、次号が出れば前号は返品と、長期的な在庫管理をする必要もなく、単価は安いけど利益率が高い。良いことづくめ。

でも今、売れないだけでなく定期購読という風習自体が失われつつだから、その「生産/仕入れ部数の安定」という柱がない。特集によって「買ったり買わなかったり」普段より売れ数は増えても、見込みが違えば返品は増大、結局赤字なんてこともあるかもしれない(実際のとこ知りませんけど)。

前置きが長くなりましたが、雑誌が売れない状況を堂々と嘆く為、そのアリバイ作りとして何か「定期購読」してみたいけれど、年間で考えるとやっぱ高いし特にこれといった雑誌が思いつかない……本日は、そんな貴方に、とってつけたようにうってつけ!「定期購読」目的に相応しい雑誌をご紹介しましょう。勿論、僕も定期購読しています。

「こどものとも0.1.2」福音館書店発行/月刊誌

流通形態上、雑誌ですが、まあこれ絵本ですね。それも「あじゃちゃん絵本」という、誌名通り0歳から2歳向けの絵本です。ページはぶ厚く、よだれが垂れても大丈夫。

世の中「雑誌」というと、多数の記事寄せ集め、つまり文字通り「雑」なところにポイントがあるんですが、もう一つのポイントは「定期刊行」されることです。定期刊行されていれば、内容が「純」(この場合は絵本)でも、そこそこ雑誌。まあ雑誌の定義はいいのですが、確かに「絵本」というのは、定期的に刊行されると育児上、便利です。パズル雑誌なんかもそうかも。あれもいろんなパズルがあって雑ではありますが、別にパズルがあればいいわけで、用途としては「純」。でも一度に沢山は要らない、と「定期刊行」にそぐった代物です。

でも何であかちゃん絵本? まず、価格が安い。本体390円。月刊誌なら安い方でしょう。あと、他の雑誌と違い、ボリュームは表紙併せて22頁と、文藝春秋等に比べればやや少なめではありますが、読み切れない心配がありません。

多少気合入れて雑誌を定期購読してみたら、多くの記事を読みきれず、どんどん溜まっていく内にゴミ感が出てきて嫌んなって止める、って人、これ真面目な話多いと思います。「読み切れる」ってのは内容問わず雑誌を定期購読する人の必須条件でしょう。

内容についても、僕はそもそも活字の本を読むのが苦手なので、これくらいが丁度良い。活字いっぱいの本をガンガン読む人にとっても「あかちゃん絵本」で描かれる世界は、あかちゃんにもウケるほどプリミティブというか、感性の根幹を狙ってくるので、なかなか面白いかと思います。

そして、僕如き年齢になると、周囲にもあかちゃん生む人が沢山。で、この雑誌をそのままプレゼントできます。普通「本のプレゼント」って素敵ではありますが、もらった方は読むプレッシャーとか保存のこととか考えると気が重くなりかねません。しかし、これは雑誌でもありますから「あかちゃん飽きたら気にせず処分してねー、ぼろぼろになるだろうし」と、雑誌故の消耗品であることを強調して贈ることができます。まあ多分は喜ばれて、自分も雑誌が溜まらない。まさに三方良し。

更に。この絵本には小さな折込み小冊子「絵本のたのしみ」が付録として挟まれています。PR誌ですが、コラムも幾つかあり、時々今をときめく系の人が記事を書いてたりします。その内の一つ、連載「あのとき、この本」。思い出の絵本を取り上げるコーナーで、これも面白いんですが、こうの史代の四コマ漫画付き! 「ときこの本」というタイトルで、漫画の内容も、その時取り上げられた絵本にちなんでいて、滅茶面白い(これちゃんと単行本になるんだろうか……)。実はこれが一番楽しみ。

いやあ、今回の余所見は即実用可のお得記事でしたね。買ってよし、読んでよし、贈ってよし、こうの史代にキュンとしてよし。早速定期購読して、何か雑誌が休刊になった時とか「雑誌冬の時代やのう」と思い切り嘆いてやりましょう。すると山本某が「そういうてめえは何か定期購読してんのか!」と怒鳴り込んできますから、「いやあ『こどものとも0.1.2』とかね、去年から」と出鼻くじいてやりましょう。

※ 赤ちゃんに読んであげるとき、付録の挟み込み冊子を抜いておくの忘れないようにご注意を! 話が途切れて、赤ちゃんも興醒めしてしまいます。下読みがてら’、抜いておこう。

※ いづれも当時の状況です(2017年追記)。今は定期購読していません(ためてたやつは三つの家族にわけてプレゼントしました)。「ときこの本」は単行本になりました。