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2012年のベストテン。良かったね。

みんなちがってみんないい、もともと特別なオンリーワン、ですが、まあ、ごごたさんですら、ベストスリーあげてますし、ベストやランキングを考えるってのはなかなか楽しいものです。

いやいや、それどころか。芸術は全て優劣の勝負であります。そこにあるのは、傑作か、そうでないか。それが元々、僕の信条であります。

なので、今年は僕も。しかし、体系的に記録をとっていないので、何処行ったか何観たか、だいたい忘れてる。何か行く直前にメールする「今行処」を参照しつつ。

でも困ったことに、僕も齢の所為か、あらかた「行って良かったな」ってなっている。そもそも鉄板しか行かず。そして鉄板を今更僕が言及しても、何だか意味がない(そもそも意味ないけど、余計)。本音で「みんなちがって、みんないい」になっている。それに、ジャンルの違いは別としても。素直にベストを上げれば、公立美術館の人と金をかけた企画展で全て埋まる気もする。

そこらへん、いろんな係数で割算した上で、なのでベストってわけでもないけれど、心に留めておきたい、2012年の諸々作品。ジャンルは一応、「展示」「舞台」「映像」で。順不同。

【映像】木村栄文レトロスペクティブ

良かったー、良かったよー。僕が観たのは「鳳仙花 ~近く遥かな歌声~」「飛べやオガチ」「いまは冬」「記者それぞれの夏 ~紙面に映す日米戦争~」の4作品のみですが。これDVDにして一般発売しておくれよ。これは一生の思い出にできる。映画館で観た時は「飛べやオガチ」が一番面白かったけど。今は「いまは冬」が冬だからか、ジンとくる。

【舞台】「POST」GTSVL Presents

良かったよねーこれ。SjQ++(この時点ではそういう名称じゃなかったか)が。でも、界隈系音楽でこれやられちゃったら、もう他の人は生半可なことができないというか。「映像中毒現象」がこのジャンルでも。藤井先生によれば、現代人は映像の刺激が強すぎるから、注意力(アテンション)が失われており、だからリュミエール・ルールの映像(カメラを操作せずに1分間の映像を嗜む)やればいいよ、ってなっていますが。この議論には色々反論したいのだけれども(発達した界隈の人には、単にリュミエール・ルールの映像から刺激を読み取れるだけな気が)。この刺激を、どう制御していくか、が期待されます(映像、後半極まってくると、音楽関係ないように、ぐりぐり動くもん。最初辺りの、シンプルにラインが演奏に寄り添う方が格好いいやん)。

【展示】「今和次郎 採集講義─考現学の今」国立民俗学博物館

良かったねー。あらかた忘れたけど、確か良かった良かった。仕事量が多いってのは良いですね、本当に。戦時中の、節約を推奨する図が良かったね。赤ちゃんで優しいオチがついていて(いろんな世代の節約方が図示されているけど、乳幼児はケチらないで、ってなっている確か)。この手の人たちの、何処までも真面目に真面目にやって、その果てで出てくるユーモア、ってのは格好良すぎる。ワジロー先生と言えば関東大震災辺りですが、戦後のテレビ出演や、家電の広告に文章書いたりと、そういうのもあって良かった。

【展示】「晶子さんとその時代~宇崎スミカズと華やかな大阪出版文化~」与謝野晶子文芸館

良かった! 宇崎スミカズ! 菅野力男にしても、明治大正昭和初期には、やや忘れ去られ気味な、謎の人がまだ沢山いそうですね。大阪の夢二、と言われたそうですが、宇崎氏の場合は、がしがしずんずん描いている感じがあって、良い。書店の二階に住んで、そこで売るんだから、この直接的な感じ。

【映像】「演劇1」「演劇2」想田和弘監督

良かったわー。ただ僕は平田オリザの著作、発言、作品、主だったところだいたい把握しているので、映画の内容については、まあ目新しいところはない。稽古場が映っているのは良かったけれど。ただ、稽古場も、もっとせりふが入っていない時点のが観たかった。「観察映画」としてはよくわからない。観察映画にしては、ちょっとあざとい感じもするし(寝息取りましたっ!とか、ここは無音ネ!とか)。もっと観察に徹して、十二時間くらいにしてほしい。

【舞台】「NSC道場」吉本興業

良かったよー。今年に限らぬあれだけど。こういう催しが、月に3回くらいあって、高校生ぐらいの若い客から、お年寄りまで、気軽に見れる場がある、ってのは良いな、って思った。お笑い、としての大阪、に特に興味なかったけれど、こういう雑多で安価なものがあるってのは、地域文化として良い、と思いました。未熟な作品もまた、構造が見えて勉強になります。一方、上手い作品には、非常に知的で挑戦的なものもあり、とても面白い。

【舞台】山本正之「リクエストショー」

良かった! 山本正之の大ファンなので、例外措置にしようかと思ったけれど。この冬のリクエストショーは特に良かった。内容は書けないけれど。

【舞台】ゴトウイズミ(クリスマス・プチ・ディナーショー)

良かったわー。広島でうろうろしている時から気になっていて、広島で何時か聴こうとしていたけれど、結局大阪で聴くことになった。音楽も良かったけれど、構成・進行が巧過ぎて、びっくり。これが広島の界隈を代表するアーティストか……いいネ広島。広島が近所にあったら、会社帰りに毎日行くのに。と言うか、これも、うっかり学生時代に出会ってたら、はまって人生が終わりかねない感じなので、あぶねえところだった。

【展示】「ムネモシュネ・アトラス──アビ・ヴァールブルクによるイメージの宇宙」平成24年度科学研究費補助金・基盤研究(B)「ヴァールブルク美学・文化科学の可能性」

良かった良かった。まあ内容については全く理解できないけれど。「精神史を一望する」明日から使えるこの方法論。こういうの、一生使えるから。シンポジウムも良かった。内容は全く理解できないけれど。ニンファね。オーケー、ニンファ。地に落ちて舞う。そういえば、アジアの天女もあれですよね、ごごうのすりきれ。「重力」のおかげで、下降と上昇は左右対称ではない。了解。

【舞台】マームとジプシー「ワタシんち、通過。のち、ダイジェスト。」

良かったわい。青年団からチェルフィッチュ、ままごと、ときてマームとジプシーってのは、こう、あまりにもあんまりな気はしますが。でも良かった良かった。現代口語・負荷・リフレイン、ドラドラドラ。素晴らしい。

【舞台】Q「虫」

良かった良かった。なるほど、リフレインしなくても、負荷な演技はできまっせ、と。勉強になったよ。女性だけの劇団?だからか、客席にいる、東京特有謎の演劇マニアたちの「AKBでなくこれに萌えている俺は全知全能の神デウス」みたいな感じも良かった。

【舞台】NODA・MAP「エッグ」

久しぶりに良かった。野田秀樹、大枚はたいてちょくちょく観ていますが(よく考えれば大阪の、そこらへんの演劇人よりは見ているはず)結構がっかりすることも多い。でもこの作品は良かった。いや、やっぱり脚本・筋立にはあまりぐっとこない。役者の演技っぷりが良くて、何となく楽しい気持ちになる。一番気になるのは、本作が寺山修司の幻の原稿、ってテイなれど、寺山修司のセンスだと「エッグ」なる題名がそもそもありえないのではないか、と思ってしまう。宣伝映画作るっていうのも、他の作家ならともかく、寺山ならピンとこない。でもいいの、深津絵里が椎名林檎を歌っていれば、それでいい。仲村トオルが、不自然なほど低い声出してれば、何でもいいや。

【展示】坂口恭平「新政府展」

良かったね。今や文科系左派の象徴天皇、鉄板です。数年前、水戸でトークを見たときは、躁な感じも鬱な感じもなく、普通に理知的で面白いお兄さん、って感じだったけれど。何時からこんな躁鬱キャラになったんだろう。この調子だと、多分色々賛否もあるだろうけれど。何より仕事量の多さが全てを担保しているので、良い。自殺するまで色々やって欲しいものです。階下でやっている、森本千絵の展示と、資本主義的に正反対なのがすごい。

十三個あるな。まあ、多いに越したことねえや。