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「どろぼうがっこう」の卒業生と「跡」のかわいらしさ

かこさとしの絵本「どろぼうがっこう」を初めて知ったのは、小学校三年生くらいの時、先生の読み聞かせだったか。もっと低年齢が対象の本だと思うけど、比較的中学年から高学年にかけて体験したような……記憶があやふやで、肝心要の筋も忘れたが、何せ泥棒の教師たる「くまさか先生」と、ラストに出てくる刑務官の、造形デザインがインパクトあった。冒頭に出てくる、みみずく、も。滑稽な「筋」よりも、絵の「ヤバさ」が印象に残っている。「なんで絵本って、こう、必要以上に、アレなんだ……」と、思ったのは確か。それで後に、図書館で絵面を確認しにいったものだ。

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どろぼうがっこう (かこさとし)| 偕成社 | 児童書出版社

……ということで、先日、我が家にも泥棒がやってきた。イベントのため昼夜を逆転させた土日を経て、ぐっすり実家のベッドで眠った後の、月曜日の朝。出勤の準備をしていると、洗濯機を回しに風呂場の脱衣所に行った母が、半笑いで「泥棒に入られたみたい」と叫んだ。

何かの思い過ごしでは、と思ったけれど、コードを切られたレジが、風呂場に置いてあった。引き出しはこじあけられれ、5円玉を残して中の釣銭は空(泥棒にとって御縁は御免なのでしょう)。これはもう思い過ごしではなく、火を見るより明らかに、やられた。

実家は所謂、店舗付き住宅。父のラーメン屋と母の服屋の二種類があり、どちらのレジもやられた。犯人は、家の裏手、風呂場の窓から侵入したらしい。二階にあがった形跡はない。寝室は三階で、誰も気付かなかった。僕は深夜1時頃まで、表道路に面した二階の部屋で灯をつけて本を読んでいた。恐らく、その消灯を確認してからの犯行であったのだろう。

被害はレジの釣銭だけではなかった。母のカバンも無くなっていた。中には財布があり、現金は2万円程度だが、日常使うカード類が入っている。急いでカード類を止める手続きに入った。

が、このカバンはすぐに見つかった。表のゴミ箱に捨てられていた。カード類は全て無事で、札だけ抜かれていた。

ということで、被害は比較的少なめ(現金十数万円程度……)で済んだ。カード類には目もくれない、昔気質の泥棒だった。そもそも、夜、に、抜き足差し足忍び足、で来る泥棒は実際には珍しい。この界隈に出てくる泥棒は(結構いると聞く。でも今回は久々の登場だったみたい)いずれも日中の犯行が多い。これ確かにテレビのワイドショーでも聞いた覚えがある。財布も、一度手に取ったものをわざわざ捨てて行くなんて、例えカードを使わないにしても、親切な話だ(持って帰った方が危険というのもあるだろうけれど)。

そんで、僕は「どろぼうがっこう、の卒業生みたいなやつの犯行だ」だと思いました。以上。

また、風呂場に置かれたレジを見て、そのシュールさに、不思議とかわいらしさ、を覚えました。勿論、この件には家族一同、ガックリきたけれど、ポツネンと風呂場に置かれたレジ、には独特の風味がある。

記憶に残る、小さい頃の情景のひとつ。中華料理屋の厨房、ステンレスの台に、ちょこんと置かれた餃子の「あん」のみ。「ネズミが皮だけ食べていった」と父は言った。本当に、皮だけを残して、中の餡は包まれた時の丸みを帯びた形で、置かれていた。何だかシュールでかわいらしかった。

(しかし、これは何らかアレンジされた偽記憶か。ネズミが皮だけ食べるとも考えにくし、仮にそうだとしてももっと荒らされているだろう。それにネズミ、餡も好きでしょう)

不思議と「跡」というのは可愛い。犬や猫の「足跡」なんかがそうでしょう。そのまま絵記号になって、はんこにもなるような。どういうメカニズムだろう。