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二・三次元嗜好症

二次元を平面、三次元を立体、とすると、二・五次元は半立体、だろうか。しかし、半立体というほどまでに立派な立体というわけでもなく、かといって、例えばエンボス処理程度の、ちょっとした浮き上がり、程度でもない。それ、を大体、二・三次元と定めよう。半立体と平面の間(やや立体寄り)。

僕は二・三次元の物体が好き。僕に限らず、きっとみんな好きだろう。

しかし、なかなか無い。もしあったら教えてほしい。誰もが、それぞれの、二・三次元物体のコレクションを持っているであろう。しかし、恐らくはそんなに数がないので、秘匿したいはずだ。しかし、何でも共有の時代。僕が断腸の思いで、今咄嗟に思いつく、二・三次元コレクションを惜しげも無くお披露目するから、これを読まれた方は僕にも教えてくださいませ。

といっても二点だけだけど。

交通人形

まず一点。僕が二・三次元嗜好症に目覚めた逸品。交通人形。それは、堺市民会館近くの横断歩道前にあった。今は無い。もう随分前になくなった。小学生くらいの頃だ。それが現役で佇んでいた時、僕は一人の通行人だった。通りかかるたび、何とも言えない感傷を抱いた。それは物体としての機能を全うするのみ、僕はただの通行人で、今こうして「二・三次元嗜好症」と名付けてしまった以上、もうそんな自然な状態には達し得ない。惜しいかな。

後年、ネットで画像を発見する。Wikipediaで。「人形」の項にあった。

ファイル:婦警と子供の交通人形.jpg – Wikipedia

「ああ、二・三次元というのは、そういう安っぽい人形とかのことね」と早合点されませんよう。……まあ、概ねはそうなんだけど。

この写真では伝わりにくい。ので文章で説明すると。この交通安全人形は、婦警と子供を模した珍しいデザインで(だいたい交通安全の図示って子供単体が多い)、単に注意を促すだけでなく、横断の際に掲げる「横断旗」を収納するのが主目的だ(なので二組で一セット)。いずれにせよ、機能としては看板(平面)に小箱(立体)でも事足れり。それでも、立体感のある人形にしているのは、まあインパクトあるからか。

で、勘所はここから。この人形は、見た目通り、看板でも良い、から、比較的平面的な作り。

しかし、実は正面から見たとき、婦警の正面の顔が、ちゃんと成り立っている。平面的な作りのまま、なので、ものすごい細面で! 一方、子供は、構造上、婦警の後ろ一歩下がっているので、正面の顔、が構成されていない。正面から見ると、裂けている。

この「平面的なものが立体であろうとする時、何かしらちぐはぐなものが発生する趣」が、二・三次元の勘所。

残念ながら、この人形、ネット上でもいくつか写真は見当たるのに、正面から撮った写真は見つからない。そこが一番、趣があるのに(また、婦警と子供、というデザインで共通しつつ、幾つかバリエーションがあるようで、顔がきちんと立体なものもある。子供は割れたままだが)。

この個人サイトに掲載されている写真が、かろうじて雰囲気が感じられる。

婦警さんと子どもの像|morisaketen.com

さて、何年か前、堺、高須神社近くの古物屋で、色褪せたこの人形と再会した。値段は(値切って)一万円。悩みに悩んで買わなかったけど。そして、この古物屋も閉まってしまった。もう少し保存状態が良かったら。

階段

これよりレベルはぐっと下がるがもう一点。これは最近、会社へ通勤する際に見つけた。

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ファッションブランド、マークジェイコブズの心斎橋店。僕はブランドについては皆目わからないが、このまるで仮設のような看板、何となく雰囲気はわかる(少なくとも過剰に装飾的ではない、ぐらいですが)。そしてこの、取ってつけたような階段。わかりますわかります。それぞれの部品、その佇まい方に、共通性がある。まあ、だからこそのブランドなわけだが。

さて、この階段。もしやと思い、近づいてみると。

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いやはや。細すぎて実用的ではないとはいえ、一応階段かな、と思いきや。細いどころか、奥行きがなくて階段から折り返しができない。そして階段にも通路にも底がない。これもまた、立体であろうとしながら、その辻褄が合わぬ例。

まだまだあるでしょう、二・三次元物件。教えてください。

2017年追記

建築だと、雑居ビルの和風料理店などでむりやり屋根瓦を配するなど、これに近しい感触あります。マークジェイコブズと似たパターンですが。同様に、天王寺駅前で有名な、ファッションホテルの上部にある「大阪城」もその類でしょうか。

それらもなかなか良いものですが、なかなか交通人形に匹敵するものは見つかりませんね。何か、生きていて、折々、これは、と思う機会もあったような気がするのですが、忘れてしまったり。概念的な蒐集も、なかなか気を張らなくてはすぐに散逸してしまいますね。